一年間(その1)

「障害者の雇用は、企業の責任ですから、今後はくらしえん・しごとえんと独自にジョブコーチ支援の契約をお願いします」
 一年前、こうして、我々のA事業所へのジョブコーチ支援が始まったのだった。

 A事業所は昨年、新たに二人の障害者の雇用をすることになった。
 そして、以前からつきあいのあった、我々に支援の要請の相談がきた。
 当初2ヶ月ほどは、県のジョブコーチ支援制度を利用したが、その後、事業所として、我々と独自契約という形で、支援に入るようになったのだった。

 基本は月2回の現場支援。
 と言っても、作業そのものの指導よりも、本人の特性に伴う周囲のとまどい、関わり方、その他社会人としてのマナーをいかに身につけるか、等々、本人が働き続ける環境をいかに構築していくかということが課題だった。

 今日、一年間の支援を振り返ってのまとめの会合を行ってきた。

 参加者は、事業所から、総務部長、製造部長、看護士、現場の担当者、そして、僕と水野。

 結論的に言えば、本当に様々なことがあり、試行錯誤の繰り返し、紆余曲折を経ながらも、確実にこの一年間で、本人は成長をしてきたということ。
 そして、その一番の要因は、粘り強い現場を中心にした、「しっかりと雇用をする」という思いがあったからだと思う。

 当初は、どう関わって良いかわからず、「困った」「何とかならないか」という状態だったが、この一年間で、「本人には上手く理解できていなかったのでは?」というように、本人の思考パターンを理解し、その上でどうしたら良いのか? という考え方が、ここそこで見られるようになってきた。

 昨年末には、職場でのパニックを行動も見受けられたが、今は、そのようなことはなく、日々安定して仕事に励んでいる。

 勿論、この先、問題は色々と出てくることは予想される。
 しかし、「現場を中心に何とかしよう、何とかなるだろう」というはっきりとした意識が生まれてきた。
 この先、現場の担当者を中心にした「間接指導」にシフトしていこう、ということも確認できた。

 この一年間の関わりは無駄ではなかったと思うが、我々の力以上に、本人の「働きたい」という意志と現場の粘り強い関わり、そして事業所の姿勢が凝縮された結果だと思う。

 (その2に続く) 

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